■深刻な若い世代の野菜・果物不足厚生労働省が2002(平成14)年に発表した「健康日本21」では、健康維持のためには、野菜は1日に350g以上、果物は200g(可食部)以上をとりたいとしています(15歳以上の成人)。しかし、最近の国民栄養調査の平均摂取量をみると、この目標は一向に達成されないままです。 同じ調査で、野菜と果物の摂取量を世代別に見ると、年齢が高いほど多くなる傾向があり、若い年代での不足が目立ちました。とくに、20歳代、30歳代の果物摂取量は少なく、目標の6割程度にしか達していません。■野菜消費量はアメリカを下回るまでにまた、野菜消費量を日米で比較したグラフを見ると、日本の消費量が減少しているのに対してアメリカは増加傾向にあり、1998(平成10)年にはついに逆転しています。今や日本人は、生活習慣病先進国といわれ、野菜不足が問題視されてきたアメリカ人よりも野菜を食べていないのです。 アメリカでは10年ほど前から、生活習慣病やがん予防対策として「5サービング以上の野菜と果物を食べよう」という「5 A DAY」プログラムを推進してきました。このグラフは、こうした運動がアメリカで広く受け入れられていることを示すとともに、わたしたち日本人の健康のためにも、野菜や果物 の摂取量をふやすことがいかに大切であるかを気づかせてくれます。■心配なのはビタミン、ミネラル、食物繊維不足このような野菜や果物の摂取不足の状況でまず心配されるのは、ビタミンやミネラル、食物繊維の不足です。とくに、ビタミンAは6割以上を野菜から、ビタミンCは3割以上を果物から摂取しているというデータもあり、野菜・果物不足はそのままビタミン不足につながります。 また、ミネラルのなかでも、日本人に不足しがちなカルシウムや鉄は、緑黄色野菜に多く含まれています。カルシウムといえば乳製品、鉄ならレバーなどに豊富であることはよく知られています。しかし、これらの食品には脂質も多く、摂りすぎるとエネルギーオーバーが心配されます。そのため、低エネルギーな野菜からもしっかりと補給する必要があります。 これらの栄養成分は、それぞれ体内の要所要所で大切な役割を担っています。たとえば、ビタミンAは粘膜の強化や目の機能維持のために、ビタミンCはタンパク質の合成や免疫機能が正しく働くために必要です。カルシウムは丈夫な骨を作るだけでなく、神経の働きを助けるためにも欠かせません。ですから、野菜・果物不足は、身体のさまざまな不調を招く原因になるのです。